玉野大介 DAISUKE TAMANO

 

「描く人物群はてんでばらばらの方を見ています。
よくある物語りに行きつきたくないところがあります。
一歩一歩確実に足を踏み外したいです」(玉野大介)

玉野大介さんの作品を前にした時、私たちは奇妙な可視感と心地よい戸惑いに包まれます。
そこに描かれているのは、懐かしい昭和の風景や記号(看板や商品)。しかし、それらは本来あるべき文脈から切り離され、私たちが知っている「物語」のレールを軽々と脱線しています。

玉野さんの表現は、シュルレアリスム(超現実主義)やダダイズムが持っていた「意味の解体」という系譜につながっています。しかし、そのアプローチはより飄々としていて、日本人の持つ土着的な「諧謔(かいぎゃく)」や「とぼけ」のフィルターを通したものです。

ルネ・マグリットが静謐な違和感で世界を揺さぶったように、玉野さんは日常の断片をモンタージュし、理論的な解釈を拒絶します。画面の中の人たちは「てんでばらばらの方」を向き、視線が交わることはありません。この徹底した没交渉が生み出す空白こそが、見るものに「意味の不在」という豊かさを提示してくれています。

「一歩一歩確実に足を踏み外したいです」という玉野さんの言葉通り、確実な技術をもって、慎重に、とぼけながら「正解」を回避してゆく。それは、わかりやすい「物語」を消費することに慣れてしまった現代社会に対する、静かな、しかし強い意志を持った抵抗のようにも映ります。
そこに意味を求めようとすると、玉野さんは優しく、そしてとぼけながら突き放します。その「不条理」の先にあるのは乾いた笑いと、どこまで行っても自由な不可解さです。「足を踏み外した」先にしか存在しない世界の肌触りなのです。

 


1961 大阪府出身
1985 早稲田大学法学部中退、画家を志す


2009 個展「奇跡のカフカ」(’10、’12、unseal contemporary/日本橋)
            劇団ナイロン100°C公演『世田谷カフカ』パンフレット挿画担当 

2011 グループ展「激凸展」 unseal contemporary/日本橋

2019 長野県松本市 おっとぼけ美術館で個展「大オリンピック展」

2020 グループ展「奇魂」ギャラリー勇斎/奈良

2021 グループ展「Art Fair Terminal」THE TERMINAL KYOTO

    個展「負の遺産」(ノートギャラリー/大阪)

2022 個展「枚方の空の下で」(ノートギャラリー/大阪)

2023 グループ展「画賊のくらわんかの失われた財宝展」(ノートギャラリー/大阪)

2024 個展「平常心」ノートギャラリー(ノートギャラリ/大阪)

2025 個展「PEACE」(ギャラリー勇斎/奈良)

    個展「夏至」(KUSAKABE GALLERY/京都)