玉本さんはこれまで、数字やアルファベット、月の満ち欠けやギリシャ神話など多くの人たちにとって親しみのある普遍的な記号や自然現象、物語を自身の哲学で再解釈し、独自の世界観を生み出してきました。
玉本さんの作品の核となるのは、布という柔らかな素材を凝縮・変容させた圧倒的なマテリアル感です。その質感は人間の内臓や細胞、あるいは脈動をイメージさせ、女性の持つ「生命力の原始」を強烈に描きだします。
現代アートの系譜において、布(テキスタイル)はしばしば身体性や内面性を象徴する素材として扱われてきました。玉本さんは布を単なる支持体としてではなく、自身が幼少期に愛用していた洋服などを用いて、自らの情念を投影する「皮膚」として扱っています。幾重にも折り重なって、執拗に造形されたそのマテリアルは、人間の内側に堆積した経験やトラウマ、そしてむき出しの生命力を手触りで感じれる「地層」となります。
またその「表層」に塗り込められた鮮烈で妖艶な色彩は、視覚を強く刺激し、私たちを理論の通じない抽象的な精神の世界に引き込みます。その細部には体の鼓動や、女性としての根源的なエネルギーが宿されていてエロス(生)とタナトス(死)が混然と存在しています。この「生々しい抽象」こそが玉本さんの独壇場であり、作品を現代のアートシーンのなかでひときわ特異な存在にしているように思われます。
1998 成安造形大学卒業
1998 テキスタイルデザイナーとして就業(2000まで)
2010 京都造形芸術大学大学院芸術研究科修了
おもな個展
2002 富山県民会館美術館/富山
2003 Galerie GAM'ART/フランス
茨城県つくば美術館/茨城
滋賀県立美術館G/滋賀
2004 福井市美術館/福井
国登録有形文化財 豪農の館・内山邸、薬種商の館・金岡邸/富山
2006 刈谷市美術館/愛知
2007 世界遺産 五箇山、相倉合掌造り集落 高桑家 山崎家/富山
高岡市美術館G/富山
坂のまち美術館/富山
2011 「生への思念」ギャラリー宮脇/京都
2012 「真相ー深層」尼信博物館/兵庫
2014 「向き合う時間」枚方市民ギャラリー/大阪
「向き合う時間」ギャラリー宮脇/京都
2015 「共鳴り」世界遺産 五箇山 菅沼集落/富山
「隣人」ノートギャラリー/大阪
2016 「原動-いのちの始原」ギャラリー宮脇/京都
2017 「脈」ノートギャラリー/大阪
2019 「集積」ノートギャラリー/大阪
2020 「概念」世界遺産 五箇山 菅沼合掌造り集落/富山
2022 「玉本奈々 在る-数秘」川端康成文学館/大阪
「歳の輪」ノートギャラリー/大阪
2025 「玉本奈々 きざはし」御殿山生涯学習美術センター/大阪
おもなグループ展
2004 「現代美術の展望VOCA展~新しい平面の作家たち~」上野の森美術館/東京
2024 「日本現代美術私観・高橋龍太郎コレクション ひとりの精神科医が集めた日本の戦後」東京都現代美術館/東京