谷森さんの造形美の原点は、幼少期に誰もが夢中になって作った「泥だんご」にあります。手の中で丸められ、磨き上げられた球体は、彫刻家としての彼女の身体感覚に深く根差した「原初のかたち」と言えます。
作品の中が空洞になった球体を生命体の象徴として提示し、そこに鮮やかに染められ三つ編みに(子供の頃に長い髪を編んだように)編まれた絹糸を纏わせます。この糸の積層は、内なる自己を優しく包み込む「境界」であり、命が持つ可憐な輝きと力強さを物語っています。
谷森さんの彫刻に対するストイックな姿勢は、師である彫刻家 福岡道雄氏が提示した「反彫刻」的な思想や、存在の根源を見つめる眼差しと深く共鳴しています。福岡氏が「つくらない彫刻」や空間の沈黙を追求したのに対し、谷森さんは「つくること」を通じて、目に見えない生命のつながりを確かな手触りへと紡いでゆきます。
「私は大きな生命の輪の中でつながっていると感じます。自分を見つめること。見つめかえすこと。そして彫刻をつくること」という谷森さんの言葉は、制作が単なる造形行為ではなく、世界と自己を再確認するための切実な対話であることを言いあらわしています。
静かに呼吸するようにたたずむ谷森さんの彫刻は、私たちに「存在することの安らぎと、微かな不穏さ」を問い掛けてきます。
1976 兵庫県出身
1999 大阪芸術大学美術学科卒業
おもな個展
2002 『記憶』画廊 編/大阪
2003 『回帰』信濃橋画廊/大阪
2003 『回帰 2』信濃橋画廊/大阪
2004 『薔薇色の螺旋』彫刻家 福岡道雄仕事場[庭]/大阪
2005 『薔薇色の部屋ー緑の渦ー』信濃橋画廊 /大阪
2006 『薔薇色の部屋ー緑の渦 2ー』アートスペース虹/京都
2006 『狂気の渦』信濃橋画廊 /大阪
2007 『luna』信濃橋画廊 /大阪
2007 『luna 2』信濃橋画廊 /大阪
2009 『あかつき闇』信濃橋画廊/大阪
2010 『泥だんご 2』信濃橋画廊 apron/大阪
2010 『追憶への追憶』信濃橋画廊 /大阪
2012 『闇烏』アートスペース虹/京都
2016 『Mother Earth―愛は巡る』アートスペース虹/京都
2018 『想ふ壺』ノートギャラリー/大阪
2021 『秘密の庭』」ノートギャラリー/大阪
2023 『Earth・空想ふ』ノートギャラリー/大阪
2025 『私たちの肖像ー空に願いを』ノートギャラリー/大阪
グループ展
2013 信濃橋画廊コレクション兵 | 庫県立美術館